2013-01-01から1年間の記事一覧

「さよなら渓谷」

吉田修一の小説が映画化されると、ちょっと気になるようになったのは、「悪人」が映画化されたときに、吉田修一自身がシナリオにコミットして、小説と違うラストに変更したということがあって、わたしは一読者として、あの小説のラストシーンには、ちょっと…

「ローマでアモーレ」

こないだキム・ギドク監督の「嘆きのピエタ」を観たBunkamuraのル・シネマはスクリーンが二つで、もう片方では、ウディ・アレンをやっている。「恋のロンドン狂想曲」がよかったので、この「ローマでアモーレ」も観にいくつもりにしていたのだが「…

宮崎哲弥、橋下徹、柳田国男

先祖の話 (角川ソフィア文庫)作者:柳田 国男出版社/メーカー: 角川学芸出版発売日: 2013/06/21メディア: 文庫 今週の週刊文春、120〜121ページが面白い。 見開きで、右側が坪内祐三の「文庫本を狙え!」、左側が宮崎哲弥の「時々砲弾」(これ今気が付…

『孤独な娘』

孤独な娘 (岩波文庫)作者: ナサニエル・ウェスト,丸谷才一出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2013/05/17メディア: 文庫この商品を含むブログ (11件) を見る ナサニエル・ウエストの『孤独な娘』。丸谷才一訳。 週刊文春に坪内祐三が文庫本を紹介するページが…

「ハングオーバー!!!最後の反省会」

「ハングオーバー!消えた花ムコと史上最悪の二日酔い」は面白かった。でも、2作目は前評判が芳しくなく、1作目の「焼き直し」にすぎないというので、観にいかなかった。いわれるまでもなく、「焼き直し」に決まっているのだけれど、海外ロケはバリエーシ…

中韓蜜月

中韓首脳会談で、韓国の朴槿恵大統領が、1909年に安重根が伊藤博文を暗殺したハルビン駅に石碑を建てる提案をした。これを橋下徹の「慰安婦発言」と比較してみれば、日本の政治家がいかに低レベルかが分かる。中韓が歴史認識を共有するアピールとなり、…

「光る源氏の物語」

光る源氏の物語〈上〉 (中公文庫)作者: 大野晋,丸谷才一出版社/メーカー: 中央公論社発売日: 1994/08/01メディア: 文庫 クリック: 2回この商品を含むブログ (12件) を見る光る源氏の物語〈下〉 (中公文庫)作者: 大野晋,丸谷才一出版社/メーカー: 中央公論社…

「嘆きのピエタ」

この監督のこの前の映画「アリラン」の予告編を映画館で観たとき、「これはちょっと近寄れない」と思った。画面の圧力というか、こちらに思いを迫るねじ込み方がちょっと異質な感じで、草間彌生の絵を観るのと同じで、観客に挑んでくる。 でも、ここで終わり…

「スプリング・ブレーカーズ」

東大が9月入学を断念したのは、この映画の影響があったとかなかったとか。 それはともかくとして、9月に新学期が始まるアメリカの大学生にとって、‘スプリング・ブレイク’春休みは、日本とは違う感覚なんだろう。最初、「スプリング・ブレイカーズ」と聞い…

水道橋博士と橋下徹

何度電話しても、NHKが居留守を使うので、いまだに受信料は払い続けているものの、何度も言うように、地デジ化以来テレビは観ていない。 そういうわけで、週刊文春の記事で知ったけれど、水道橋博士が橋下徹と大阪の番組で口げんかの末に、スタジオを出て…

萱野稔人と慰安婦問題

上田秀明という日本の人道人権担当大使が、スイス・ジュネーブの国連拷問禁止委員会で、日本の人権状況に対する批判に対して「日本は人権先進国」と反論したところ、会場から笑いが起きたそうで、そのとき「シャラップ!」と会場を怒鳴りつけた様子が、‘傲慢…

古賀茂明と慰安婦問題

古賀茂明が、今回の橋下徹の発言を、その原発に対する態度と照らして、実利と倫理が対立するとき実利を採る、倫理性のなさだと指摘している。 しかし、そういってしまうと事実にそぐわなくなると思えるのは、今回のことはむしろ‘国家’というイデオロギーにこ…

「二流小説家」

公開のはるか前から、ちょっと面白そうなんじゃないかと思っていた「二流小説家 シリアリスト」という映画を観にいった。 けど、そのまえに、前日のエントリー(実際は昨夜書いているのだけれど)に書いたようなことを、もっと正確に、政治的にコレクトに、…

池上彰と「従軍慰安婦」

今週の週刊文春に、池上彰が今回の‘従軍慰安婦騒動’について書いている。 いわゆる「従軍慰安婦」問題の“誤解”を解けば、国益が守られたのか。なまじ中途半端な歴史論争を展開しようとしたため、かえって国益が大きく損なわれたのではないか。 詳細は読んで…

「はじまりのみち」

新編 われわれはなぜ映画館にいるのか作者: 小林信彦,和田誠出版社/メーカー: キネマ旬報社発売日: 2013/03/30メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る 小林信彦の『われわれはなぜ映画館にいるのか』が、新しく編集されて復刊された。もとは19…

‘慰安婦問題という名の泥沼’

Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2013年 6/11号 [慰安婦問題]出版社/メーカー: 阪急コミュニケーションズ発売日: 2013/06/04メディア: 雑誌この商品を含むブログ (1件) を見る ニューズウィーク日本語版の6月14日号に、橋下発言についての詳細な検証が…

「グランドマスター」

「グランドマスター」は、息を呑むほど美しい。映画館を出てひと息ついた後、まず浮かんだ思いは、「美しい中国が帰ってきたのではないか」という、予感とも期待ともいえない淡い幸福感だった。 わたしたち日本人にとっての中国とは何だったか?。ネトウヨと…

昨日の続き

昨日の続き。 あいもかわらず、隊列をなして靖国に参拝している日本の政治家は、いかにもスケールが小さく見える。 靖国は、‘信仰の対象なので、誰が参拝しようが個人の自由だ’という言い方は、一応できる。しかし、政治的に見れば、靖国とは、19世紀的な…

靖国神社で立ち小便

どこかの韓国人が、靖国神社で立ち小便したんですと。それで、それをYouTubeかなにかにアップしたらしい。勝谷誠彦がそれをSPA!の巻頭コラムに取り上げて‘日本人の魂に対する冒涜だ’みたいなことを書いている。 たしかに、立ち小便は迷惑です。こないだ…

「リアル〜完全なる首長竜の日〜」、「藁の楯」

去年、ヴェネチア映画祭でのスタンディングオベーションも記憶に新しい、黒沢清監督の「リアル〜完全なる首長竜の日〜」。 Wikipediaのフィルモグラフィーによると、2008年の「トウキョウソナタ」以来の劇場映画だから、そういえば、しばらくぶりという…

「俺俺」

三木聡監督の「俺俺」。 わたしが最初に見たこの監督の映画は「転々」。そのつぎが「インスタント沼」で、今回はそれ以来4年ぶりの新作。 「転々」は藤田宣永の小説が原作で、映画を観た後原作も読んだが、原作はかなり自由にいじりまわされていた。とくに…

橋下徹 日本外国特派員協会の記者会見

橋下徹は27日、日本外国特派員協会の記者会見で、 「まず、元従軍慰安婦の方たちに、旧日本軍のなした非人道的な仕打ちについて、同じ日本人として心からお詫びします。日本人としてという以上に、人間として、そのような残虐行為をなしえたことに、心から憤…

プロパガンダについて

このところ従軍慰安婦のことばかり書いている。そろそろおわりにしなければいけない。なんといっても、私自身は、従軍慰安婦どころか戦争についてさえ何も知らない。そして、もはや戦争について知っているといえる人たちは少なくなった。にもかかわらず、い…

パフォーマンス?

今週の週刊文春はほとんど‘橋下徹バッシング号’というべき編集になっている。 なかで‘おや?’と思ったのが、「沖縄はゆすりの名人」という発言で辞任したケビン・メアという人が今回の橋下発言に対して「米軍人はみんな怒っている」と書いているのだが、その…

マスゴミと従軍慰安婦

今日の国会で、韓国の駐日大使が、日本への原爆投下を「神の懲罰」と指摘した韓国紙のコラムについて「韓国人の一般的な考え方ではない」と述べたそうなんだけど、そりゃそうでしょ。さすがにばかばかしい。石原慎太郎が、東日本大震災を天罰だと言って以来…

川田文子と従軍慰安婦

このところ、仕事、引っ越しの片付け、仕事、引っ越しの片付け、という日々で、それ以外何もしていない。そんなわけで、今日も従軍慰安婦のおうわさ。 今日発売のニューズウィーク日本語版に、ロバート・E・ケリーという釜山大学准教授の投稿があって、 ア…

従軍慰安婦と綿井健陽

あの市長のトンデモ発言・認識によって、逆に「慰安婦」の事実が再びクローズアップされて、多くの人があらためてこの国の負の歴史を知ったり、考えたり、議論する機会を得たというのも、また興味深い。日本軍「慰安婦」に関するあらゆる「事実と証拠と証言…

安倍晋三と橋下徹と従軍慰安婦と村上春樹

火曜日はニューズウィーク日本版の発売日。わたしはひっこしする少し前まで定期購読していた。そのほうが単価で100円も安い(もしかしたらもっと安かったか)。でも、引っ越しを考え始めたころに、ちょうど更新がかさなったので、新しい部屋に落ち着いて…

ひっこしをめぐるあれこれ

たまにひっこしするのもよいのかもしれない。いやおうなく自分の暮らしを見つめ直すことにもなるし、とくに、わたしみたいにずぼらな人間には、リセットのチャンスになる。 いろんなことが先延ばし、放りっぱなしになっているなかで、昨日は、ついにKLX2…

「リンカーン」、「声をかくす人」

映画「リンカーン」は先月21日に観ていたのだけれど、引っ越し、風邪引き、帰省が重なって、つい書かずにいてしまった。 今年のアカデミー賞授賞式での、ダニエル・デイ=ルイスのスピーチを加藤祐子が紹介している。 昨年「鉄の女」で主演女優賞を受けた…